1,000億バーツ規模のタイゴム手袋業界でシェア争奪戦、タイ石油公社も参加意欲
2 มี.ค. 2564
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1,000億バーツ規模のタイゴム手袋業界でシェア争奪戦、タイ石油公社も参加意欲
1,000億バーツ規模のタイゴム手袋業界でシェア争奪戦、タイ石油公社も参加意欲

1,000億バーツ規模のタイゴム手袋業界でシェア争奪戦、タイ石油公社も参加意欲

(プラチャーチャートトラキット新聞電子版2021年2月24日付)

  「タイのゴム手袋産業は、今後5年間は成長する。」タイゴム手袋製造者協会会長はこのように述べる。既存、新規両方の投資家から、この投資ブームに400億バーツ以上の資金が流入してきている。タイ石油公社(PTT)やタイファラバー社も投資を予定し、天然ゴム価格を60-70バーツに押し上げる。マレーシアモデルに倣い、融資の支援、都市計画上の規制の緩和、FTA交渉、偽ゴム手袋業者の摘発等タイ政府に民間への支援策が求められる。 

    新型コロナウイルス感染拡大危機のなか、2020年のタイのゴム手袋輸出は、726億8,038万バーツで95パーセント増と史上最高を記録。今後も成長が見込まれ、2021年は輸出額1000億バーツ台と予想されている。世界中で感染防止対策として使用される重要製品として注目が高まっているため、今後も成長は続くとみられる。

   タイゴム手袋製造者協会(TRGMA)ウィラシット・シンジャルンクン会長は、プラチャーチャートトゥラキット新聞の取材に対し、タイのゴム手袋産業の見通しについて、新型コロナウイルスの流行により、消費者がヘルスケアを重視する傾向から、世界でゴム手袋の需要が高まっており、少なくとも向こう5年間は成長し続けるだろうと述べた。マレーシアゴム手袋生産者協会(MARGMA)によると、2021年の世界のゴム手袋需要は、4,200億枚と2020年の3,300億枚に比べ15-20%の増加。ゴム手袋世界シェア第2位のタイは、470億枚でシェア約18%、一方マレーシアは世界シェアの約6割を占めている。「ゴム手袋価格は価格が上昇しており、現在ワクチンができた段階でも、発注取り消しや値下げ要求はない。需要が高まっており、現在、タイの生産者は先行受注分、またはバックオーダーを10~20か月分(1~2年分)も抱えており、製品によっては30か月分にも。世界中のゴム手袋工場も現在受注を受けられない。タイの業者も、新規発注を受けられない状態だ」と話す。

今後5年間の投資計画

 業界内で聞かれる話で、タイゴム手袋製造業者協会会員企業の中には、3~5年後納入分の先行受注分に対応するために設備増強を計画、一部の会社ではコロナ以前から計画していたものの、コロナによる需要増に対応のため、追加の生産設備拡張を行うことになったという。現在ゴム手袋製造業者による大型投資で、タイ経済に資金が流入している。中には今後5年間で400億バーツを投じて拡張を行う企業もある。現在でもゴム手袋は高い成長率で推移しており、この業界は新規参入の投資家にも魅力ある業界として関心を集めており、既存の事業者も投資額を増やしている。協会加盟各社で19の工場があり、さらに包装資材、化学薬品などのサプライヤーも50社以上にのぼる。

 一方で「昨年聞いたところでは、新規に10の工場が立ち上がる情報があるが、確認したところ、実際投資をしているのは、タイ、マレーシア、米国系の企業で、医療機器業界と異業種を合わせて2~3事業者だけ。工場設置認可申請済みの事業者、土地を取得済みの事業者もあるが、複数の事業者が資金不足でまだ投資できていないという。しかし、現在の高需要期(2020~2021年)に操業が開始できないと、投資リターンがその分遅くなるので、検討が必要だ。」とウィラシット会長は話す。

 マレーシアのゴム手袋工場がコロナで操業を停止する工場について、その後、関心を示す新規投資家が100程度あるという情報があったが、実際には15の投資家のみ。したがって、世界のゴム手袋製造業界の全体像はほとんど変化してないといえる。今回操業を停止したのは、2、3の世界規模で展開している大規模企業の所有する工場10~20のうち、1~2工場を操業停止したにすぎないので、操業停止による供給や販売への大きな影響はなかった。

マレーシアの後を追う

 世界のゴム手袋市場は成長しており、タイの事業者も生産増強を加速しているが、「タイはマレーシアに追いついていない」ともいわれている。その要因として、マレーシアのゴム手袋製造会社は、株式市場に上場しており、資金アクセスがよい。債券の発行やIPOによる資金調達によって生産設備増強が短期にできる上、マレーシア政府による手厚い支援により、同国の主力の目玉産業に成長している。一方タイでは、ゴム手袋産業が最近になってようやく知られるようになり、2020年に新型コロナが流行するまでは、ゴム手袋は脚光を浴びる業界ではなかった。そのため、例えば投資など、様々な支援を受けるのが難しい。現在はタイ政府のタイ天然ゴム公社による3%利子補給プログラムがあるだけで、また工場拡張についても、適当な地域内でも都市計画の問題があり簡単でない。

 一方、市場拡大についても、マレーシア政府は、各国と市場開放の協議を行った結果、中東諸国向けで関税が2%まで削減されたが、タイの場合はまだ14〜15%の関税が残っている。タイ政府は、将来的に市場競争力向上のために、貿易交渉を加速させる必要がある。

 「今年は世界経済が回復し始める年になる可能性が高く、この業界に利益をもたらすと考える。さらに、ゴム、アブラヤシ、銅、プラスチック、その中でも特に天然ゴムの需要と価格の方向性については、明るいものとなっている。とくに、ゴムの平均価格は1kgあたり約60〜70バーツと高水準を維持している。タイは天然ゴム手袋と合成ゴム手袋の両方を生産している。サプライチェーンの上流としては、天然ゴムの生産量は十分あり、いくつかの工場では濃縮ラテックスの生産設備増強を行っている。しかし、合成ゴムの原材料のいくつかで競合がみられる。私としては、天然ゴムの上流は十分で、現在上流の生産能力拡大中だとみる」とウィラシット会長は述べる。

マイナス要因を打ち破る

 これらの要因がゴム手袋業界に影響を与える可能性があるとして、①米国新大統領のバイアメリカン政策②輸出用コンテナの不足③タイバーツ高④取引詐欺事件が挙げられる。バイアメリカン政策については、米国内でのゴム手袋生産能力不足により、世界からの輸入に依存している状態で、ゴム輸出市場に影響はないと思われる。一方、取引詐欺事件については、偽のゴム手袋取引サイトや偽工場、偽の会社名を使っての取引などについて、会員企業のスクリーニングの強化など、協会はゴム手袋輸出業界のイメージダウンの早期回復に努めている。

シートランとタイファが生産ラインの拡張

 シートランアグロインダストリー社(STA)のチャリンヤ・ジロートクン社長は、全体の生産目標の達成が当初より早くなりそうだと述べた。2028年に生産量を2倍に(700億枚)に拡大するという目標だったが、コロナの影響による100年間で最高レベルの世界的な需要増加で、さらに2年前倒しし、2026年には達成できるだろうと話す。昨年からシートラン社は4工場の増設を開始し、2021年第1四半期に順次開設する予定となっている。ソンクラー県サダオ市の2工場は100億枚、さらにスラタニー県の2工場は60億枚の生産能力を持つ。しかし先日、試験操業中のスラタニー工場で火災が発生したが、この火災による生産への影響は全体の0.6%にすぎず、2~3か月後には生産を再開できる見込みだ。

 タイファラバー社とサンタイゴム手袋工業社(STHAI)の社長を務めるラックチャイ・キティポン社長は、今年4月にタイファ社が100億バーツを投じ、ラックチャイ天然ゴム工業団地に新しい生産ラインを「タイファホールディング」名で開設すると発表した。この工場は中国や外国企業との提携で、特に北米とEU市場むけに全量を輸出する。初年にはこの工場から20億箱を輸出できると計画しており、他の提携工場とも連携して、30億箱に上積みできるという。さらには2023年には最大40億箱に増強し、提携工場と合わせて60億箱体制にできると予想する。

タイ石油公社が提携に参加

 タイ石油公社(PTT)のダウンストリーム事業戦略管理担当副社長兼子会社のイノビックアジア社社長のブーニン・ラタナソンバット氏は、合成ゴム(ニトリルゴム)手袋事業の投資拡大のために、合弁先を探していると述べた。この分野は生命科学関連の新事業(医薬品、次世代食料、医療用器具・資材、医療診断)の一つで、グループ内の石油化学グループの原材料が使えるという重要なメリットがある。「弊社は、工場建設許可を申請するために、現在グローバルパートナーと協議しており、弊社のIRPC部門とGC部門に製品原料2種類がある。製造技術については、合弁先の技術によるものとなるが、技術をもっているのは韓国、台湾、マレーシア系の企業となる。ライセンスを獲得し次第工場建設を開始して2022~2023年には操業を始める予定。販売事業はその間にも進めたい」と話す。

 

 2021年2月19日現在の情報では、タイのゴム手袋、医療用ゴム手袋業界は投資額172億バーツで、49の工場が操業している。上位5位は次の通り。

1位シートラングローブタイランド社(投資額79.06億バーツ、ソンクラー県に4工場)、

2位カーディナルヘルス222社(投資額29.94億バーツ、ラヨン県に1工場)、

3位タイセーフスキンメディカル&サイエンティフィック社(投資額13.63億バーツ、ソンクラー県に1工場)、

4位メルカトルメディカルタイランド社(投資額11.55億バーツ、ソンクラー県に2工場)、

5位トップグローブメディカルタイランド社(投資額4.39億バーツ、ソンクラー県に1工場)

 

出典https://www.prachachat.net/economy/news-619365

(非公式訳、タイ王国大使館農務担当官事務所)

 

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